ちょっと違う切り口の映画ニュースをお届けするウェブマガジン


Amadeus
1984/アメリカ/160分
出演:F・マーリー・エイブラハム トム・ハルス エリザベス・ベリッジ 
監督:ミロス・フォアマン

偏差値:62.8 レビューを書く

生涯忘れられない映画 [100点] [参考:1]

このレビューはネタバレを含みます

 「モーツァルトよ!お前の曲がもっと聴きたい。もっと私に曲を書いてくれ!」サリエリの本心は、実はこうではなかったのか。モーツァルトの才能を見抜き、もっとも作品を愛し、理解していたのはサリエリ自身だった。

 モーツァルトの生涯を単になぞらえた映画だったら大失敗していただろう。この映画を名作としているのは、サリエリの目を通してモーツァルトを描いているからだ。

 「モーツァルト許してくれ。告白する、お前を殺したのは私だ。」と自殺未遂の果てに精神病棟に入ったサリエリが、神父に語りかけるように物語が進行していく。回想しながら展開していく演出は見事だといっていい。神父に向けられるサリエリの表情は、時に優しく、時に激しく揺れ動く。

 モーツァルトに対する憎しみ、復讐、渇望、不安、怖れ、憧れ、焦燥、サリエリの長きに渡る苦しみはいかばかりか。胸中を察するに余りある。

 「嫉妬」というキーワードをなしにこの映画は語れない。

 モーツァルトが紳士的で大人の男性であれば、サリエリのモーツァルトに対する嫉妬心はそれほどでもなかっただろう。ところがモーツァルトは高慢で、女のケツを追い掛け回す品性下劣な男である。

「なぜ神は下品な若者を選んだのか。」サリエリは、神をも裏切り十字架を焼き払ってしまうシーンは、サリエリの激しい憎しみの感情が見て取れる。

 車椅子でサリエリが運ばれるシーンからエンディングロールにいたるまで、私は涙が止まらなかった。サリエリの気持ちが痛いほどわかるからだ。そう、この私も凡人なのだから。

 最後のモーツァルトの笑い声は一体何を意味するのか?(モーツァルトの声を借りて)「神は、あの世でも私のことを馬鹿にしているのか?せせら笑っているのか?」サリエリの心の叫び声が聞こえてきそうである。

2010/05/06 05:00

クラさん

参考になりましたか?

この映画のレビューをまとめて表示する