Dr.パルナサスの鏡
The Imaginarium of Doctor Parnassus
2009/イギリス・カナダ/ショウゲート/124分
出演:ヒース・レジャー ジョニー・デップ コリン・ファレル ジュード・ロウ クリストファー・プラマー リリー・コール トム・ウェイツ ヴァーン・トロイヤー アンドリュー・ガーフィールド
監督:テリー・ギリアム
http://www.parnassus.jp/
『ダークナイト』のヒース・レジャー渾身の遺作にして
撮影半ばで逝った彼の役を、ジョニー・デップら3人の親友が引き継ぎ、
『12モンキーズ』『ブラザーズ・グリム』の鬼才テリー・ギリアムが監督する、
映画史上類を見ない、美しき絆が生んだ話題作!
ヒース・レジャー最後の出演作にして、すでにテリー・ギリアム監督最高傑作との
呼び声も高い『Dr.パルナサスの鏡』が、ついに第62回カンヌ国際映画祭で、様々
な噂と伝説に彩られたベールを脱いだ。撮影半ばでのヒースの急逝により、一時は
製作中止とまで言われた本作は、10分間の熱いスタンディング・オベーションで、そ
の完成を称えられた。
まだ俳優として未知数だったヒースを『ブラザーズ・グリム』に抜擢して以来、公
私にわたる親交を深めてきたギリアム。彼にとってヒースの死は、自分のイマジネー
ションを体現する才能あふれる主演俳優と、愛する息子のような存在を同時に失う
という、耐え難い衝撃だった。その、あまりに悲しく大きな穴を埋めたのが、ヒースの
親友であるジョニー・デップと、ジュード・ロウ、コリン・ファレルら友人たちだった。ヒースのために集まった、この豪華キャストのおかげで、一時は暗礁に乗り上げた映画
は奇跡的に救われた。
舞台は、2007年のロンドン。1000年の時を生きてきたと語るパルナサス博士を座
長とする旅芸人の一座が、劇場仕立ての馬車で街から街へと巡業を続けている。
座員は、博士の美しい娘ヴァレンティナ、頭のキレるこびとのパーシー、曲芸師の心
優しい若者アントン。出し物は、人が密かに心に隠し持つ欲望の世界を具現化し
て見せる「イマジナリウム」。博士の瞑想に導かれて魔法の鏡を潜り抜けると、その
向こうに広がる自らのめくるめく幻想の世界を体験できるのだ。人々の心を操り、そ
の気になれば世界を変える力さえ持っているのに、博士は何かに脅えていた。か
つて博士は “不死”と交換に、生まれてくる娘を悪魔に差し出す約束を交わしたの
だ。期限は、間近に迫った娘の16歳の誕生日。そんな折、ヴァレンティナが橋の下に
吊るされていた記憶喪失の青年トニーを助けたことから、一座の運命は思いがけ
ない方向へと転がり始める……。
謎の青年トニーを演じたのが、『ダークナイト』のジョーカー役で、アカデミー賞助
演男優賞を受賞したヒース・レジャー。故人としては、史上二人目の栄誉だ。彼が急
死したのは、現実世界のシーンを撮り終えた後だった。残されたのは、鏡の中の幻
想世界。一座に加わり、博士の舞台に集まった観客を甘い口上で鏡の中へと誘い
込むのが、トニーの役目だ。幻想世界では、観客の願望に従ってトニーの容貌も変
化するというアイデアを思いついたギリアムは、脚本を変えなくとも撮影を続けられ
ると確信、新たなるトニー役を探す。
ヒースの代役を最初に快諾したのが、『パイレーツ・オブ・カリビアン』シリーズの
ジョニー・デップ。かつて『ロスト・イン・ラ・マンチャ』でも描かれた『The Man Who
Killed Don Quixote』の製作中止で、監督と出演者として同じ痛みを味わった盟
友ギリアムの頼みを断るわけにはいかなかった。さらにヒースの映像を見て、深い
感銘も受けたという。続いて『クローサー』のジュード・ロウ、『マイアミ・バイス』のコリン・ファレルも、コリン言うところの「痛みを伴う名誉」を引き受けた。「監督はヒース
だったと言ってもいいくらいだ」とギリアムが語るように、ヒースの映画への愛と情
熱が、ギリアムの想像力さえも超えて、驚愕のファンタジー・ワールドの傑作として、
本作を完成へと導いた。
「ヒースの演技を必ず世に出さなくてはならない」毎日のように撮影を共にした
スタッフ・キャストの想いも一つだった。聡明なはずなのにどこか抜けている愛すべ
きパルナサス博士に扮するのは、名優クリストファー・プラマー。『サウンド・オブ・
ミュージック』から『インサイダー』まで、数々の名作に出演している。博士の娘ヴァレ
ンティナには、ポスト・ケイト・モスと称されるスーパーモデルのリリー・コール。悪魔のMr.ニックを怪演したのは、ギリアム監督の『フィッシャー・キング』にも出演した
ミュージシャンのトム・ウェイツ。パーシーには、『オースティン・パワーズ』シリーズの“ミニ・ミー”役で知られるヴァーン・トロイヤー。アントンには、『大いなる陰謀』で注目されたアンドリュー・ガーフィールド。
オリジナル脚本を書き上げたのは、『未来世紀ブラジル』『バロン』に続くギリアムとの共作となるチャールズ・マッケオン。撮影監督は、ギリアムの『ラスベガスをやっつけろ』『ブラザーズ・グリム』『ローズ・イン・タイドランド』も手掛けたニコラ・ペコリーニ。編集は、ギリアムの『12モンキーズ』を担当したミック・オーズリー。
本作は、映像の魔術師と称えられるギリアムが、パルナサス博士に自身の人生を投影したという自伝的作品でもある。「幸せとは何か?」という問いかけを込め、無限大の人間の想像力が世界を救う可能性を持つことを、今この時代に教えてくれる、壮大かつ感動のエンタテインメントが誕生した。
STORY
パルナサス博士の鑑の向こうは、人の欲望を形にした世界
不死と引き換えに、悪魔に最愛の娘を差し出す約束をした博士は、
いま鏡の中の世界で、最後の賭けに出る—
2007年、ロンドン。石畳に馬の蹄が響き、今にも壊れそうな馬車を引いている。
タワー・ブリッジの袂で停車すると、馬車から奇妙な舞台が現れる。旅芸人の一座の出し物が始まるのだ。
座長は1000歳以上だという老人、パルナサス博士(クリストファー・プラマー)。座員は、博士の美しい娘ヴァレンティナ(リリー・コール)、彼女に想いを寄せる曲芸師のアントン(アンドリュー・ガーフィールド)、皮肉屋で頭の回転が速いこびとのパーシー(ヴァーン・トロイヤー)。アントンの口上で始まったのは、人が心に秘めた欲望を具現化して見せる「イマジナリウム」。パルナサス博士の瞑想に導かれて鏡を通り抜けた観客は、そこに広がる自らの願望を形にした幻想世界を体験できるのだ。
しかし、怪しげな一座の舞台にあがる観客はいない。いたずらな子供が偶然飛び込んで、めくるめく体験に目を丸くするだけだ。
かつてパルナサス博士は、人里離れた山里で暮らす偉大な僧侶だった。今でもその気になれば世界を揺るがす力を持っているのに、彼は何かに脅えていた。悪魔のMr.ニック(トム・ウェイツ)にそそのかされて下界へ降り、一人の女性に恋をした時、博士は不死と若さを手に入れるためにMr.ニックととんでもない約束をしてしまったのだ。
生まれてくる娘が16歳になったら、悪魔のMr.ニックに差し出すという約束を・・・・・・。
当の娘ヴァレンティナは普通の家庭に憧れ、いつか一座から逃げ出したいと願っていた。ある日彼女は、橋から首を吊られていた若い男、トニー(ヒース・レジャー)を助ける。記憶喪失の彼はそのまま一座に加わり、客寄せを手伝うようになる。魅力的な容姿と巧みな話術で一気に女性客が増え、ヴァレンティナも彼に心を奪われる。期限の3日前、突然現れた悪魔のMr.ニックは、博士にある賭けを持ちかける。鏡の向こうの世界で、先に5人を“獲得”したら、娘を渡さなくてもいいと言う。
幻想世界に入場した客に、悪魔の歪んだ欲望の道か、博士の節度ある道かを選択させるのだ。事情を聞きつけたトニーは、舞台をゴージャスかつファッショナブルに改装し、詐欺師も驚く才能を発揮して、次々と鏡の中へ女性客を誘導していく。実はトニーの記憶はほとんど戻っていた。橋の下で自分を殺そうとした男たちの姿に気付いたトニーは、客と一緒に鏡の中へと逃げ込む。客の願望を形にしたトニー(ジョニー・デップ)は、彼女を博士の選択に導くことに成功する。しかし、残りはあと一人となった時、トニー自身の願望を反映したトニー(ジュード・ロウ)が誘導に失敗してしまう。追っ手と悪魔に迫られて窮地に立ったトニーとヴァレンティナは、二人一緒に鏡の向こうへと逃げる。ヴァレンティナの願望のトニー(コリン・ファレル)がさらけ出す、彼の真の姿とは?
期限まであとわずか、博士は娘を救えるのか・・・・・・?