風が強く吹いている
2009/日本/松竹/133分
出演:小出恵介 林遣都 中村優一 川村陽介 橋本淳 森廉 内野謙太 ダンテ・カーヴァー 斉藤慶太 斉藤祥太 津川雅彦
監督:大森寿美男
俺たちはつかんだ。
人生を変える一歩を。
無謀な可能性に挑んだ、寄せ集め10人のキセキ。
目指せ、箱根駅伝。
なぜ彼らは、無謀な闘いに挑んだのか?
答えは、ゴールの遥か向こうに待っていた──
彼らの挑戦は、誰が見ても無謀だった。本人たちですら、不可能だと思っていた。ただ1人、この夢を企てた男、ハイジ以外は──。天に与えられた"走る"才能をもった2人の若者が出会った。致命的な故障でエリート・ランナーへの道を諦めたハイジと、事件を起こし競技から遠ざかった天才走者カケルだ。ハイジはカケルこそが、秘かに温めていた計画の切り札だと確信、壮大な夢への第一歩を踏み出す。それは、寛政大学陸上競技部の8人と、学生長距離界最大の華<箱根駅伝>出場を目指すこと。ところがこの競技部とは名ばかりで、8人は陸上から縁遠い上に、漫画オタクや25歳の留年生、アフリカから来た留学生など、ユニークなキャラクターがそろっていた。だが、なぜかハイジは、自信に充ち溢れている。彼の編み出す緻密なトレーニング法と走ることへの信念、仲間への揺るぎない信頼が、皆を変えていく。やがて明かされる、ハイジの故障の理由とカケルが起こした事件の真相、そして8人それぞれが抱えてきた本当の想い。果たして、心を一つにした10人は、箱根の頂点に立つことができるのか──? 走るという行為だけで、観る者の胸をこれほどまでに熱く燃やすのは、欠点だらけのフツーの若者たち。昨日までは目的もなく生きていたが、仲間と固い絆を結ぶ喜びと、夢を追いかける充実感を知り、自らの限界に挑んでいく。そんな彼らがつかんだのは、生きる手ごたえ。映画『風が強く吹いている』は、この不安な時代に呑み込まれることなく、生きる実感を得るために、「新しい何かを始める」勇気と希望を与えてくれる感動作なのだ。
真の強さとは何かに迫る傑作小説、待望の映画化
今を輝く期待の若手俳優たちが、渾身の力でスクリーンを駆け抜ける!
原作は、直木賞作家・三浦しをんの同名小説。選手たちの「走るとは何か?」の問いかけは、すべての人々の「生きるとは何か?」の問いかけに重なっていく。胸躍るスポーツ青春小説であると同時に、普遍的な人生のテーマを追いかけた作品として広く愛されている小説の、待望の映画化が実現した。長距離選手に必要なのは、"速さではなく強さ"──故障による泥沼から這い上がり、独自の結論に達したハイジを演じるのは、『ROOKIES─卒業─』の小出恵介。その確かな演技力で、若手俳優の中でも一歩抜きん出た存在だ。純粋に心の底から走ることを望むあまり、他人との衝突も多いカケルには、『バッテリー』の林遣都。その他、『体育館ベイビー』の中村優一、「ROOKIES」の川村陽介、『タッチ』の斉藤慶太、斉藤祥太、ソフトバンクのCMで大ブレイクしたダンテ・カーヴァーなどが出演。また、津川雅彦がチームの監督役に扮して脇を固める。監督は、これがデビュー作となる大森寿美男。NHK大河ドラマの「風林火山」、「クライマーズ・ハイ」、映画『星になった少年』などの脚本家として知られている。本作のもう1人の主役は、箱根駅伝。コースの1区から10区までを忠実に再現、3万人のエキストラを集め、40ヶ所にカメラを設置、スクリーンにリアルなレースを再現した。10人が起こした本当の奇跡とは何だったのか? 2009年秋、スクリーンで、魂を焦がすレースが始まる──!
STORY
2人の出会い~
「俺がずっと探していたのは、君だったんだ」
ついに、ハイジ(小出恵介)は見つけた。共に夢を叶える仲間の、切り札にして、最後の1人を。彼の名はカケル(林遣都)、18歳。ハイジが4年生になる寛政大学に、この春から通う新入生だ。高校時代に天才ランナーと呼ばれた彼の走りをその目で確認したハイジは、戸惑うカケルを半ば強引に、自らが寮長を務める竹青荘に入居させる。まかない付きで3万円という破格の家賃には、陸上競技部に入部して毎朝5キロ走るという入居条件があった。ハイジの作るうまい料理のために、喜んで走り続ける8人の住人は、まだ誰もハイジの野望に気付いていなかった。
ハイジの宣言~
「10人で力を合わせて、箱根で頂点を目指そう!」
ハイジの突然の箱根駅伝出場宣言に、唖然とする9人。それもそのはず、ハイジとカケル以外は全員、陸上とはかけ離れた者ばかりだ。ニコチャン(川村陽介)は、2浪に1留で25歳のヘビースモーカー。法学部のユキ(森廉)は、すでに司法試験に合格済みの頭脳派。ヴィジュアル系の顔立ちから、その名がついた王子(中村優一)は、愛する漫画の山の中で暮らす漫画オタク。キング(内野謙太)はクイズオタクの雑学王で、やたら日本語がうまいムサ(ダンテ・カーヴァー)は、アフリカからの超マジメな国費留学生。神童(橋本淳)は心優しい性格で、竹青荘の良心と呼ばれている。新入生のジョータ(斉藤慶太)とジョージ(斉藤祥太)は、女の子にモテることしか考えないお気楽な双子の兄弟だ。
カケルの反乱~
「あなたに、走ることの何がわかるんですか?」
「素人が、無理です!」強く反対したのは、なぜかカケルだけ。だが、ハイジには勝算があった。「ニコチャンは陸上経験者、双子とキングはサッカー、ユキは剣道、神童は往復10キロの山道を歩いて通学、ムサに秘められた潜在能力は測りしれない」一応監督である竹青荘の大家・田崎(津川雅彦)のゆるい励ましも受け、翌朝から箱根を目指す日々が始まった。驚くことに皆、カケルと遜色のないペースで走っている。「もしかして、行けるのか?」カケルの期待を一瞬で壊したのは、青い顔で息も絶え絶えの王子だった。最初の課題は、予選会出場条件の「5,000メートル17分以内」をクリアすること。皆で真剣に走った結果、問題は33分の王子だけ。しかし、どんな時も前向きなハイジは、とりあえず走り切った王子を「凄い進化だ」と、称える。
ハイジ、倒れる~
「速さだけじゃダメだ。そんなのは虚しい」
記録会で、ぶっちぎりの速さを見せつけたカケルに、名門校六道大学のエース藤岡(渡辺大)が声をかける。彼とハイジは高校の同級生だ。「奴も復調してきたな。膝の故障さえなかったら、毎年箱根で会っていた」藤岡の言葉に驚くカケル。彼の完璧な走りに刺激され、カケルの中に焦りと欲が生まれる。
漫画に夢中な王子と、呑気に酒盛りをする皆に、カケルの不満が爆発する。「もっと練習しろよ!」その時、ハイジが初めて怒った。「漫画と同じように、走ることを好きになれと言ったそうじゃないか。その言葉こそ、本当の君だ」そう言いながら、バッタリと倒れるハイジ。選手兼監督兼コーチ兼マネージャー兼管理人からくる過労だった。ハイジは、病院に附き添うカケルに問う。「長距離選手に対する、一番の褒め言葉って何かわかるか?」「速い...?」「俺は、強い、だと思う」
10人の挑戦~
「ここまで、一緒に来てくれて、ありがとう」
人が変わったかのように、過酷な訓練を重ねた王子は遂にタイムをクリア、寛政大学は予選会に向けて、夏の合宿訓練を開始する。近くでは、ライバルの東京体育大学も合宿、カケルの高校の同級生・榊(五十嵐隼士)の姿もあった。「そいつ監督を殴って、俺たちの最後の1年を棒に振ったんですよ」挑発的な榊の言葉に「知ってるよ」と平然と答えるハイジ。夏が終わり、秋になり、予選会の日がやってきた。寛政大学は最下位の9位ながら見事に通過、ついに箱根への切符を手に入れる。年が明けて1月2日、箱根駅伝のスタート地点、東京大手町。1区を走る王子は、プレッシャーに勝てるのか? 風邪を引いた神童は? そして何よりも、ハイジの膝は──? 「最高の朝だよな、カケル」1本の襷にすべてを賭けて、ついにレースが始まった──。
10月31日(土)全国ロードショー