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さまよう刃

2009/日本/東映/112分
出演:寺尾聰 竹野内豊 伊東四朗 長谷川初範 木下ほうか 池内万作 岡田亮輔 佐藤貴広 黒田耕平 酒井美紀 山谷初男 
監督:益子昌一
脚本:益子昌一
原作:東野圭吾
音楽:川井憲次
http://www.yaiba.jp/

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最愛の人が奪われたとき、あなたはどうしますか?

正義とは何か。誰が犯人を裁くのか。
残虐な犯罪を続ける少年犯。彼らは“少年法”に保護されている。
「妻を亡くした私にとって、娘・絵摩はただ1人の肉親です。
かけがえのない宝です。
あの子がいるからこそ、
これからの人生を生きていく意味を持てました。」
最愛の娘が、少年達によって、凌辱され殺された。
ある日、謎の密告電話により、失意のどん底に落ちていた父親・長峰重樹は、犯人を知ることになる。
「我が国の法律では未成年者に極刑は望めない!」
復讐が何も解決しない虚しい行為だと分かっていながら、父親は自ら犯人を追うー。

そして、長峰を追う2人の刑事。織部孝史と真野信一。
被害者の絶望は、永遠に消えない。そして、少年達は犯した罪と同等の刑を受けることはない。
「我々はあんな奴のために毎日捜査を続けている。
あいつに更正するチャンスを与え、
そして被害者の目の届かないところに隠そうとしている」
「それがこの国の司法制度だ」
法律を守る。という建前の正義を優先する警察組織に、不条理さを感じる刑事達。

「俺たち警察は、市民を守っているわけじゃない。
警察が守ろうとしているのは、法律の方ってことですか」
それぞれが苦悩しながら、この事件は予想外の結末を迎える。

映像化を熱望された、150万部突破のベストセラー
「秘密」で第52回日本推理作家協会賞、「容疑者Xの献身」で第134回直木賞を受賞し、他にも「流星の絆」「手紙」など映画・ドラマ化作品で大ヒットを連発している作家・東野圭吾。そんな東野作品の中でも問題作と位置づけられている「さまよう刃」は、少年法と被害者感情の乖離など社会に対する問題提起がたちまち話題となり、現在までに150万部を越すベストセラー記録を樹立。映像化不可能と言われながら、最も映像化を熱望されていた作品がいよいよスクリーンに登場する。

『半落ち』から5年、寺尾 聰が再び命の意味を問う。
主演の長峰役には『半落ち』、『博士の愛した数式』などで、世間に強烈なインパクトを与えた寺尾 聰。静かにしかし圧倒的な存在感で演じている。
共演は、映画『冷静と情熱のあいだ』やTVドラマ『Tomorrow』、『BOSS』などの竹野内 豊。警察官として、真の正義と現実の狭間で苦悩する若手刑事・織部孝史を演じる。また、コメディからシリアスな作品まで幅広く活躍している伊東四朗が、ベテラン刑事・真野信一を演じる。
監督・脚本は『ひまわり』『きょうのできごと』など数多くの行定 勲監督作品のプロデューサーであり、脚本家としても知られる益子昌一。08年公開の映画『むずかしい恋』以来2本目の監督作品となる。撮影は『レッドクリフ』(ジョン・ウー監督)などで撮影を務めた中国の王 敏(ワン ミン)。音楽は押井 守作品をはじめとする話題作を数多く手がける川井憲次。
重厚な映像と音楽が、少年犯罪の実状と被害者家族の心情を、深く社会に投げかける。
見る者の心を激しく揺さぶる衝撃作が、ここに誕生した。

【Story】
「獲物、見っけ」
深夜の路上を徘徊する乗用車に、引きずり込まれる少女の悲鳴が、闇に吸い込まれていく――翌朝、荒川べりで、無残な制服姿の死体が発見される。事件現場に駆け付けた刑事、織部孝史(竹野内 豊)と真野信一(伊東四朗)は、死体に強姦と薬物注射の痕跡があることを知る。少女の身元が判明、長峰重樹(寺尾 聰)の中学生になる一人娘・絵摩であった。連絡を受けた長峰が、遺体安置室で変わり果てた娘と対面する。憔悴、落胆、遣り切れない無念。妻を亡くし、娘の成長だけを楽しみに生きていた長峰は、生きる目的すら失って失意のどん底へと突き落とされた。絶望と無気力の日々。その彼の家の留守電に、謎の人物からメッセージが入る。

「絵摩さんはスガノカイジとトモザキアツヤに殺されました。トモザキの住所は・・・」
警察から捜査の進展状況も知らされず、苛立ちを覚えていた長峰は、疑念を抱きながらも、伴崎のアパートを訪れる。主が不在の部屋で長峰が見つけたビデオテープには、絵摩を力ずくでレイプする、人間の姿をした怪物、伴崎と菅野の姿が映し出されていた。この世に、こんなにまでの理不尽な不幸、無慈悲な悪があるのだろうか。激しい慟哭と怒りに駆られた長峰は、やがて帰宅した伴崎の腹部に、その場にあった刃物を突き立てた。「菅野はどこだ・・・」姿を消す長峰。

やがて、捜査本部の織部と真野の元に、長峰から、伴崎殺しを自供する手紙が届き、現場から発見された指紋から、長峰の犯行と断定される。長峰の手紙には、未成年者ゆえに与えられる刑罰の軽さを憂い、自分はどうしても彼らを許せないと心のうちが書き綴られていた。長峰の心情に同情以上の何かを感じた織部は、真野に激しく詰問する
「結局、われわれ警察がしていることは、菅野のような者に更生するチャンスを与え、長峰さんのような被害者の未来を奪い取っているだけじゃないんですか」
「長峰にはもう未来なんてないんだよ」
真野の一言はこの上なく重く、織部の心に響く。

伴崎殺しの犯人として全国に指名手配されたころ、長峰は長野の山中にいた。伴崎が口にした「長野のペンション」という一言を頼りに、菅野の後を追っていたのだ。菅野の写真を見せ、一軒一軒尋ね回りながら、やがて廃屋と化した一軒のペンション跡に辿り着く長峰。一方、伴崎のアパートから出た証拠品のビデオテープの映像から、織部と真野も菅野の潜伏先を長野に絞り込み、同じ廃屋へと向っていた。
運命の哀しい糸に手繰り寄せられるようにして、対峙する長峰と織部・真野。やがて、やり場のない憤り、世界の不条理に衝き動かされ、物語は衝撃の結末に向けて、加速していく――

10月10日(土)全国ロードショー