正義のゆくえ I.C.E.特別捜査官
Crossing Over
2008/アメリカ/ショウゲート/113分
出演:ハリソン・フォード レイ・リオッタ アシュレイ・ジャッド ジム・スタージェス クリフ・カーティス アリシー・ブラガ
監督:ウェイン・クラマー
http://seiginoyukue.jp/
捜査官にも人情がある。「彼ら」にも事情がある。
ハリソン・フォードが「悩める主人公」に挑んだ、新たな代表作!
1970年代から数々のヒット作に出演し続けるハリウッドを代表する大スター、ハリソン・フォード。その長いキャリアの中で、初めてメジャースタジオ以外の出演作となったのが本作『正義のゆくえ I.C.E.特別捜査官』だ。脚本の完成度の高さとテーマ性にハリソンが惚れ込み、低予算ながら出演を快諾。「これは『インディ・ジョーンズ』シリーズとは180度かけ離れた作品だ。今までとは違う、こうした役柄を演じることで、新たな可能性が得られたことを、自分でも嬉しく思っているよ」と力強く語る。従来の娯楽性の高い出演作での「ヒーロー」的な役柄とは一味異なり、グローバル化による社会問題と「正義」の間で揺れ動く等身大の主人公を熱演、俳優として新たな局面を切り開くことに成功している。
真の「正義」とは…? 国境をめぐる犯罪に、たったひとりで立ち向かう—
ロサンゼルス—南北アメリカの国境に近く、東洋と西洋が交差するこの街には、夢を追って来た若者、一家で移住してきた家族、そして無断で国境を越えてきた不法就労者まで、あらゆる人種が集まってくる。マックス(ハリソン・フォード)は移民局I.C.E.に所属するベテラン捜査官。不法滞在者の取締りが任務だが、正義感が強く良心的なために、彼らの立場に同情的だ。母親の逮捕後に取り残された幼い子供が気になってメキシコに送り届けるなど、つい彼らの面倒をみてしまう。そんなある日、同僚の捜査官の妹が殺される。遺品の服に偽造グリーンカードを発見したマックスは、独自に調査を始めるのだが…。「国を守る」ために彼らを逮捕しなくてはならない立場にいるマックスは、はたして本当の意味で彼らを「救う」ことができるのだろうか。
現代社会が抱える問題をリアルに描いた、衝撃の社会派ヒューマンドラマ
現在、全米に1,100万人以上いるとされる不法滞在者。オバマ大統領の誕生を機に、大きく変わりつつある「いま現在のアメリカ」を舞台に、国境をめぐるリアルで衝撃的なドラマが次々と展開し、観る者の眼を捉えて離さない。本作で描かれているテーマは、決して「対岸の火事」ではない。日々のニュースを思い起こすと、私たち日本人にとっても「傍観者」ではなく「当事者」となりうる問題であることに気づくはずだ。脇を固めるのは、アシュレイ・ジャッド、ジム・スタージェス、レイ・リオッタなど実力派にして個性的な面々。監督・脚本は『ワイルド・バレット』(06)を手がけた注目の新鋭ウェイン・クラマー。
STORY
【捜査官マックスと不法移民ミレヤ】
カリフォルニア州ロサンゼルス市内の港町サンペドロ。ICE(移民税関捜査局)の拘置所には、逮捕された不法滞在者が昼夜を問わず移送されてくる。ベテラン捜査官のマックス(ハリソン・フォード)の職務も、密入国者や不法就労者の捜査だ。だが良心が強いためか、容疑者の健康や事情をつい気遣ってしまい、同僚からは「人道的すぎる」「処分が甘い」とからかわれる事が多い。
ある日、マックスら捜査官は市内の縫製工場に踏み込み、不法就労者を一斉逮捕する。メキシコから国境を越えてきた若い女性ミレヤ(アリシー・ブラガ)は、「幼い息子を人に預けているの。住所を書くから助けて」とマックスにすがりつく。気の毒に思いながらも、マックスは「そこまでは無理だ」と断らざるを得ない。結局、母親のミレヤだけがメキシコへ強制退去になってしまう。それを知ったマックスは深夜、捜査現場に戻り、残されたメモを発見する。息子のホアンを探し当てたマックスは、親子が暮らした部屋からメキシコの住所を突き止め、自分の車で国境を越えて、ホアンを祖父母の暮らす家まで送り届ける。だがアメリカに残された息子のことを心配して、ミレヤは昨夜、再び一人で国境へ向かったというのだ。マックスはミレヤの行方を追うことにする。
【ミュージシャン志望のギャビンと女優志望のクレア】
プロのミュージシャン志望で南アフリカ出身のギャビン(ジム・スタージェス)は、ユダヤ人学校の講師という職を得たばかりだ。実際はユダヤ教徒ではなく、ヘブライ語も分からないが、「宗教関係者」と認められればグリーンカード(永住査証)が取得できる。まずは生活のため安定した収入と永住権を得て、いつかは音楽で成功することを願っている。恋人のクレア(アリス・イヴ)はオーストラリア出身でハリウッド女優を目指している。出演のチャンスが巡ってきたが、条件は労働許可を得ること。どうしても役が欲しいクレアは、グリーンカードの偽造さえしようとする勢いなので、ギャビンは心配している。
クレアはビザ申請のため入国管理課を訪れるが、滞在延長手続きは受理されていなかった。落胆した彼女は自動車事故を起こしてしまう。相手は偶然にも移民判定官だった。コール(レイ・リオッタ)と名乗るその男は、グリーンカードが欲しいクレアの弱みを見抜き、彼女をホテルに誘う。偽造はできないが、経歴をねつ造した申請書類を自分のところに回せば、許可を与えるというのだ。条件は2ヶ月間、いつでも体を自由にさせること。クレアは承諾せざるを得ない。その後、クレアがグリーンカードを手にすることを不信に思ったギャビンは、コールとの関係に気づいてしまう…。
【イスラム教徒の少女タズリマと移民弁護士デニス】
バングラデシュ出身の高校生タズリマ(サマー・ビシル)は、ヘジャブ(ベール)を着用する敬虔なイスラム教徒だ。ある日、自分の論文を発表する授業で「メディアは9.11の実行犯を怪物や殺人鬼と決め付けるけれど、人間扱いすべきです」と発言し、クラス中の非難を浴びてしまう。その晩、彼女の家はICEとFBIの強制捜査を受ける。「テロを支持する危険分子だ」と言うのだ。弟と妹はアメリカで生まれたので市民権があるが、3歳で米国に来たタズリマは両親ともども不法滞在者ということで、一家を代表して拘置されてしまう。
デニス(アシュレイ・ジャッド)は、不幸な境遇に陥っている不法移民に手を差し伸べる人権派の弁護士だ。ナイジェリア出身の孤児アリークを養女として引き取ることも検討しているが、夫の判定官コールとはあまりしっくり行っていない。デニスはタズリマの弁護を引き受けるが、FBIはタズリマに対する厳しい処分を曲げようとしない。結果的にデニスが一家に示せる選択肢は三つしかなかった。「家族全員で自主退去する」か、「強制退去になる可能性が高くても裁判で争う」か、「タズリマと両親のどちらかがアメリカを去り家族離れて暮らす」か。しかも「アメリカに残る親は、タズリマと再び会うことも許されない」というのだ…。
【韓国出身の高校生ヨン、捜査官ハミードと妹のザーラ、そして捜査官マックス】
家族4人でLAに暮らすヨン(ジャスティン・チョン)は、市民権取得式典への出席を目前に控えた高校生だ。普段はおとなしく暮らしているが、同じ韓国系の不良グループからの誘いを断ることができない。彼らは「コリアタウンの一角にあるリカーショップが、毎週金曜の夜に5万ドル持っている」という情報を得て、拳銃を突きつけて強奪する計画をヨンに持ちかける。
マックスの相棒ハミード(クリフ・カーティス)は、イラン出身。兄弟含め既にアメリカに帰化しており、父親も今週の土曜日には市民権を取得する予定だ。その祝賀パーティに招かれたマックスは、妹のザーラ(メロディ・カザエ)を紹介される。家族の中で唯一アメリカ生まれのザーラは、勤務先の店長と不倫中で、一家の中で浮いた存在だ。離婚を経験し、結婚を控えた一人娘と連絡が取れないマックスは、ザーラの境遇に同情する。ところが翌日、ザーラと店長が死体で発見される。店長の上着には、偽造グリーンカードが残されていた。事件に不法移民ビジネスの匂いを嗅ぎ取ったマックスは、独自に調査を開始する。
ヨンは不良グループに誘われ、覆面姿でリカーショップを襲撃する。単身パトロール中だったハミードは、事件現場に出くわす。その頃、マックスはザーラ殺人事件に関する衝撃的な事実を突き止めようとしていた…。
9月、TOHOシネマズ シャンテほか全国ロードショー