セントアンナの奇跡
Miracle At St.Anna
2008/アメリカ・イタリア/ショウゲート/163分
出演:デレク・ルーク マイケル・イーリー ラズ・アロンソ オマー・ベンソン・ミラー ピエルフランチェスコ・ファヴィーノ ヴァレンティナ・チェルヴィ ジョン・タートゥーロ ジョセフ・ゴードン・レヴィット ジョン・レグイザモ ケリー・ワシントン ルイジ・ロ・カーショ オメロ・アントヌッティ セルジオ・アルベッリ
監督:スパイク・リー
http://www.stanna-kiseki.jp
INTRODUCTION
現代、ニューヨーク・・・郵便局殺人事件
1944年、フィレンツェ・・・消えた彫像事件
2大陸、2つの時代を結ぶ謎が今、明かされる ──
実話から生まれた<奇跡>の物語
「この子を守りたい」敵味方を越えた人々の願いが起こした奇跡
それは、不可解な殺人事件だった。ニューヨークの郵便局で、局員が窓口に切手を買いに来た男を、顔を見るなり射殺したのだ。前科も病歴も借金もない真面目一筋の彼の部屋から、行方不明になっていた歴史的に極めて重要なイタリアの彫像が発見される。2人の間に、いったい何があったのか──? 謎を解く鍵は、1944年のトスカーナにあった。
時は、第2次世界大戦の真っ只中。若き郵便局員は、黒人だけの部隊“バッファロー・ソルジャー”の一員として、ナチスとの激しい戦いに身を投じていた。ある日、黒人兵の1人が現地の子供を救出したために、共に行動していた4人が部隊からはぐれ、トスカーナの村に辿り着く。まさかそこに予想もしない激烈な運命と、ある<奇跡>が待っているとも知らずに……。
弱き者を守りたい──それは、人種や文化の壁を越え、いつの時代も人間が抱く最も強く美しい願いだ。その願いのもと、敵味方に関係なく、1人の少年の命を救おうとする人々がいた。しかし、容赦ないナチスの攻撃にさらされ、遂に天にも見放されたと思ったその時、奇跡が起きる。戦争という極限状況でも失われなかった人と人の絆が、奇跡を成し遂げたのだ。
『セントアンナの奇跡』で描かれるのは、神や宿命のような人智の及ばない力ではない。愛と信頼から生まれる“人の力”だ。現代アメリカに戻るラストシーンは、私たちに奇跡を生み出す力がある限り、混迷を極める今日の世界でも、まだ希望はあると教えてくれる。
「CHANGE」するアメリカと共に歩む、スパイク・リー監督の新たな挑戦
1986年の監督デビュー以来20余年、スパイク・リー監督は、様々な角度からアメリカ黒人社会を描き続けてきた。ブラック・カルチャーをユーモラスに描きながら、人種差別への深い憤りを込めた『ドゥ・ザ・ライト・シング』、過激な黒人解放指導者の伝記『マルコムX』、黒人男性と白人女性の恋愛を描いた『ジャングル・フィーバー』、麻薬と銃の汚染を暴く『クロッカーズ』──スパイク・リー監督作品を見れば、ファッション、音楽、犯罪、政治など、近年のアメリカ黒人社会の光と影が一望できる。
そんなスパイク・リー監督が、最新作で取り上げたのは、第2次世界大戦時に実在した黒人だけの部隊、第92歩兵師団“バッファロー・ソルジャー”。彼らが送り込まれた最前線、イタリアのトスカーナには、封印された残酷な史実があった。1944年8月12日、ナチスが罪のない大勢のイタリア市民を殺害した“セントアンナの大虐殺”(注)だ。
戦場を舞台にした初めての作品となる本作で、スパイク・リー監督の視点に、明らかな変化が見られる。そこに描かれるのは、黒人と白人の対立関係ではなく、戦争を支持する者と、しない者の対立。人の命が奪われることに涙する者たちの想いが、一つになる姿だ。
折しも、アメリカ史上初の黒人大統領が誕生した。バラク・オバマもまた、黒人と白人の真の共存を唱えている。彼の熱い支持者として知られるスパイク・リー監督は、様々なインタヴューに応じているが、その中で「こういう時代に生きているのは素晴らしいことだ」と語っている。変わりゆくアメリカと共に歩む、スパイク・リー監督の新たなる第1歩が、本作なのである。
封印された史実に新たな光を当てた物語を演じきった、実力派キャスト
原作は、叔父がかつてバッファロー・ソルジャーの一員だったという、ジェイムズ・マクブライドの「Miracle at St. Anna」。幼い頃に聞かされた叔父の話を思い出し、現地で徹底的に調査すると共に、自身のイマジネーションを駆使してこれを書き上げた。2003年に出版されたこの小説に即座に熱狂したスパイク・リー監督は、マクブライドに映画化と共に脚本も依頼、そこからさらに数年をかけて、壮大なスケールの感動ドラマが完成した。
美しいイタリアの自然を背景にした、リアルな戦闘シーンが胸に迫る撮影は、『インサイド・マン』『アイアンマン』のマシュー・リバティーク。
バッファロー・ソルジャーズの4人の小隊には、『君の帰る場所/アントワン・フィッシャー』のデレク・ルーク、『9デイズ』のマイケル・イーリー、『7つの贈り物』のラズ・アロンソ、『8Mile』のオマー・ベンソン・ミラー。イタリアの村に住む美しくも魅惑的なレナータには、『ある貴婦人の肖像』のヴァレンティナ・チェルヴィ。その他、スパイク・リー監督作品ではおなじみの、『グッド・シェパード』のジョン・タトゥーロ、『ハプニング』のジョン・レグイザモが脇を固めている。
(注)イタリアのサンタンナ・ディ・スタッツェーマ市で起きた事件。アメリカでは"セントアンナの大虐殺”で知られ、"サンタンナ”を"セントアンナ”と発音している。
本作品においても、アメリカのシーンで"セントアンナ”と発音されていることから、タイトルおよび本プレスでは"セントアンナ”を採用。
STORY
1983年、アメリカ──ニューヨークの街に、衝撃が走った
郵便局員が、窓口に切手を買いに来ただけの男を、顔を見るなり突然射殺する。犯人の局員は、前科もなければ借金もない。精神状態も良好で、25年間仲睦まじく暮らした妻は病気で亡くなり、定年退職の3ヶ月前だった。
さらに不可解なことに、局員の部屋から、彫像の頭部が発見される。それは、イタリアのフィレンツェのサンタ・トリニータ橋を飾る“プリマヴェーラ”で、歴史的に大変貴重な作品だった。1944年にナチスが橋を爆破した時から、行方不明になっていたのだ。
いったい郵便局員と男の間に何があったのか?なぜ、闇市場に出せば500万ドルはするという美術品が、局員のクローゼットの中に眠っていたのか?
すべての謎を解く鍵は、彫像が消えた1944年のイタリアにあった──。
1944年、イタリア──トスカーナの村に、奇跡が起きた
この子を守りたい──黒人兵の願い
それは、第2次世界大戦の真っ只中だった。郵便局員は兵士として、イタリアのトスカーナで戦っていた。彼が所属するのは、第92歩兵師団、バッファロー・ソルジャー。アメリカが過酷な“最前線”に送り込む、黒人だけの部隊だ。ナチスが待ち受ける中、偵察隊として彼を含む4人の黒人兵が川を渡ることに成功するが、その中の1人が爆撃に倒れた少年(マッテオ・シャボルディ)を助けたことから、彼らはそのまま部隊とはぐれてしまう。
少年を見殺しにできなかった心優しい兵士の名はトレイン(オマー・ベンソン・ミラー)。フィレンツェで拾った彫像の頭を、お守り代わりに持ち歩いている。少年が足手まといだと怒るのは、いつも自分勝手なビショップ(マイケル・イーリー)。無線兵のヘクター(ラズ・アロンソ)はイタリア語が堪能で、首からさげた十字架にキスをするのが習慣の信心深い男。彼らをまとめるリーダーが、知性溢れるスタンプス(デレク・ルーク)だ。少年は初めて見る黒人であるトレインを“チョコレートの巨人”と呼び、彼にはすぐに心を開く。大きな体に純粋な魂を宿すトレインは、少年には何か神秘的な力があると信じるのだった。
村を守りたい──トスカーナの人々の願い
4人の黒人兵は、少年の治療と食料を求めて、村を守るという言い伝えのある〈眠る男〉の山のふもとに辿り着く。彼らはレナータ(ヴァレンティナ・チェルヴィ)という英語が話せる美しい女とその家族に、強引に世話になる。
ケガから回復した少年が、"友達”に「助けてあげる?」と話しかけると、壊れていた無線機が急に音を出す。それを見たヘクターも、少年の不思議な力を信じ始めるのだった。無線機からは白人少将の無謀な指令が流れる。ナチスに囲まれた村で孤立しているというのに、自分たちでナチスの兵士を捕虜に取れと言うのだ。
村に足止めされる日々の中で、4人の兵士と村の人々は、徐々に心を通わせる。黒人を知らない彼らに、偏見はなかった。故郷アメリカでは、人種差別で辛い思いをしてきた。そして今、国のために戦っているのに、黒人兵の命は紙くず同然に扱われている。イタリアの空の下で、ビショップはレナータを誘惑し、トレインは少年との友情を深め、ヘクターとスタンプスは初めて人としての自由を感じるのだった。
せめて子供たちだけは守りたい──ある兵士の願い
村でのひと時の休息は、思わぬ来客の到来で終わりを告げる。ペッピ(ピエルフランチェスコ・ファヴィーノ)が率いるパルチザンたちが、食料を求めて山から降りてきたのだ。国内のファシズム体制に抵抗し、ナチスと戦う彼らは、果たして味方なのか? 彼らが捕虜にしていた1人のナチスの兵士をめぐり、小競り合いが起きるが、尋問が終わればアメリカに引き渡すというペッピの言葉で、ひとまず彼らは休戦状態となる。
その時、捕虜のドイツ兵が、不可思議な行動に出る。元気な姿の少年を見て涙ながらに喜び、彼を抱き寄せると何事か囁いたのだ。その光景が心に引っかかるヘクターは、少年との対話を試みる。トレインに促されて、少年は初めて自分のことをポツリポツリと語り始める。名前はアンジェロ、セントアンナからやって来た。教会でドイツ人と逢い、「全速力で逃げろ」と言われた。彼は友達だが、もう1人の男が怖い・・・・・・。
実は、セントアンナでは、ナチスによる民間人の大虐殺が起きていた。アンジェロは、その汚れなき瞳で、いったい何を見てしまったのか──?
誰か裏切り者がいたのか? 村に押し寄せるナチスの大軍。
つい昨夜、酒を酌み交わしダンスを踊った人々に、容赦なく降り注ぐ銃弾の嵐。
肩を撃ち抜かれたアンジェロを抱えて、遂に力尽きるトレイン。
その時、ひとつの奇跡が起きようとしていた──。
1983年、再びアメリカ──
今、すべてが明かされ、もうひとつの奇跡が……
7月末、TOHOシネマズ シャンテ、テアトルタイムズスクエア他、全国ロードショー!