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2009/日本/東宝
出演:大森南朋 玉山鉄二 栗山千明 高良健吾 遠藤憲一 松田龍平 中尾彬 柴田恭兵 嶋田久作 志賀廣太郎 小市慢太郎 グレゴリー・ペーカー 脇崎智史 
監督:大友啓史
http://www.hagetaka-movie.jp/

偏差値:58.8 レビューを書く

カネのない悲劇、カネのある悲劇 [85点]

本作も『ROOKIES -卒業-』と同じくTVドラマを観ていることを前提に作られた続編であり、ドラマから4年後が舞台となっている。

そのためほとんどの登場人物について詳しい説明がないため、初めて『ハゲタカ』を観る人には事前にTVドラマを観ておくことをお薦めする。

TVドラマを観ていなくても中国政府の投資ファンドを隠れ蓑とした日本企業の買収劇としては十分面白いのだが、TVドラマを観ていればより以上に楽しむことが出来る。

TVドラマはアメリカ系投資ファンドの日本代表で「ハゲタカ」と呼ばれた鷲津政彦(大森南朋)vs日本企業の買収劇であった。

映画はリーマンショックにより疲弊したアメリカではなく、経済成長の著しい中国政府の命令で日本企業の要ともいえる自動車会社を買収しようとする中国系投資ファンドvs日本企業の戦いとなっている。

本作の鷲津は中国系投資ファンドの側ではなく、TVドラマでは敵対しながらも盟友となった芝野健夫(柴田恭兵)の依頼により日本企業を守るホワイナイトとして登場する。

本作を1つの映画として評価すると、やはりTVドラマを観ていることを前提に作られているため鷲津や主要な人物の説明が不足しているとの印象は拭えない。

またTVドラマでは重要な役割を演じていた松田龍平や栗山千明の出番が少ないのも残念である。

その代わり初登場の「赤いハゲタカ」こと劉一華(玉山鉄二)の謎に包まれた過去、現在、未来が描かれており、悪役でありながらもその悲しい人生に共感しカッコよささえ感じた。

しかし主役はあくまでも鷲津と彼が率いる鷲津ファンドであり、彼らと劉一華の頭脳戦とも言える買収合戦がTVドラマ以上のスケールで描かれている。

また劉一華の過去が本作の重要なキーポイントとなっているため、それが明らかになることによる謎解きの楽しみも味わうことができる。

そして中国政府の潤沢な資金により絶体絶命となった鷲津がどのような手段で対抗するのかも見所の1つである。

これだけの話を2時間14分で映画化するとやはり語りきれない部分も多く、買収劇も意外と淡々と進むのだが、その分テンポもよく時間を感じずに観ることが出来る。

また、劇中で一度の買収に使う金額が数百億円や数千億円とか、中国系投資ファンドの資金力は20兆円とか言われても、あまりにも桁違いでピンとこないのだが(笑)、現実の投資ファンドも我々の知らないところで恐ろしい駆け引きをしているんだろうなと感心した。

レビューのタイトルはTVドラマや映画で使われる『ハゲタカ』を象徴する次の言葉から引用したものである。

「誰かが言った、人生の悲劇は2つしかない。1つはカネのない悲劇、そしてもう1つはカネのある悲劇」

同じ悲劇ならカネのある悲劇がいいと思うのは私だけだろうか(笑)

2009/06/11 20:24 (2009/06/12 04:43修正)

kira

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