リリィ、はちみつ色の秘密
The Secret Life of Bees
2008/アメリカ/20世紀フォックス映画/110分
出演:ダコタ・ファニング ジェニファー・ハドソン アリシア・キーズ クィーン・ラティファ ソフィー・オコネド ポール・ベタニー
監督:ジーナ・プリンス・バイスウッド
製作:ローレン・シュラー・ドナー、ジェームズ・ラシター、ウィル・スミス、ジョー・ピキラーロ
製作総指揮:ジェイダ・ピンケット・スミス
原作:スー・モンク・キッド
音楽:マーク・アイシャム
http://movies.foxjapan.com/hachimitsu/
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14才の夏−それはリリィにとって特別な夏だった。
4才のとき、自分の過ちで大好きな母を失ったリリィ。それから10年、心の傷にたったひとりで耐え続けてきた彼女の胸には、いつもひとつの大きな疑問が浮かんでいた。「母は私を本当に愛してくれていたの?」。その答えをみつけるために、ある夏の日、リリィは旅立ちを決意するー。
2008年10月17日から6週連続で全米ヒットチャートのトップ10にランク・イン。口コミによって観客数を増やし、いまなお絶賛の輪を広げている珠玉の感動ドラマが登場した。『リリィ、はちみつ色の秘密』は、全米で500万部以上の売り上げを記録し、35カ国語で愛されたスー・モンク・キッドのベストセラー小説の映画化。不幸な過去を背負い、傷ついた心を抱える14才の多感な少女が、亡き母の面影を求めてたどりついた養蜂場の三姉妹のもとでひと夏を過ごす間に、優しさに触れ、強さを学び、本当の愛の意味を知って成長を遂げていく姿を、アメリカ南部の陽光きらめく美しい映像の中に描きあげた心に染みる名編だ。
主演は、デビュー作『I am Sam アイ・アム・サム』の名演技で世界中を驚かせ、以来、ハリウッドで最も有名な天才子役として活躍を続けているダコタ・ファニング。『シャーロットのおくりもの』から2年ぶりの日本公開作となる本作では、役柄と同じ14歳の等身大の魅力を発揮。自分の過失で母を失ったあと「誰からも愛される資格がない」と思いつめてきたリリィが、生まれて初めて家族のぬくもりを教えてくれた三姉妹に見守られながら、心を解き放ち、愛のさまざまな形を見つけていく過程を、繊細に、のびやかに演じている。とりわけ、幼いころから父の横暴さに苦しめられてきたリリィが、父もまた心に傷を負った人間であることに気づく場面の健気な熱演には、誰もが涙を誘われずにいられないだろう。
そんなダコタを支えるキャストの顔ぶれに、社会的に成功をおさめた養蜂場の経営者で、大地のように豊かな愛情でリリィを包み込む三姉妹の長女オーガストには、『シカゴ』でアカデミー賞助演女優賞候補になったクィーン・ラティファ。“恋愛と結婚は別”という進歩的な考えを持つ音楽教師の次女ジューンに、グラミー賞11部門受賞に輝く天才歌姫で、女優としても活躍するアリシア・キーズ。人一倍優しく、人一倍傷つきやすい三女メイには、『ホテル・ルワンダ』でアカデミー賞助演女優賞候補になったソフィー・オコネドー。さらに、リリィの幼少時代からの唯一の味方で、旅を共にするロザリンを好演する、『ドリームガールズ』でアカデミー賞助演女優賞を受賞したジェニファー・ハドソン、妻に捨てられた怒りをリリィに向けることしかできない粗暴な父親のT・レイに扮し、強い印象を残す、『ダ・ヴィンチ・コード』の演技派ポール・ベタニーなど、豪華なアンサンブル・キャストが結集した。監督&脚本は、スパイク・リー製作の『ワン・オン・ワン ファイナル・ゲーム』で、インディペンデント・スピリット賞の新人脚本賞を受賞したジーナ・プリンス=バイスウッド。いま注目の女性監督だけあって、登場人物ひとりひとりの心情を丁寧にすくいあげていくきめ細やかな演出に、並々ならぬ才能をうかがわせる。その他のスタッフは、撮影監督に『クイルズ』のロジェ・ストファーズ、美術に『勇者たちの戦場』のウォーレン・アラン・ヤング、衣装デザインに『25時』のサンドラ・ハーネンデス、音楽に『クラッシュ』のマーク・アイシャムと充実の顔ぶれが揃った。また、近年プロデューサーとしてもめざましい活躍を見せるウィル・スミスとジェイダ・ピンケット・スミス夫妻が、製作と製作総指揮で参加していることも大きな話題のひとつだ。
オーガストがリリィに初めて養蜂の手ほどきをするときに語る「大切なのは蜂に愛を送ることだ」という教え。それは、蜂と人間の世界に共通する秘密を物語っている。心をこめて愛を送れば、その愛はきっと通じるとー。夏が終わる頃、たくましく成長した彼女が、母の本当の思いを知ると同時に、それに勝るほどの温かな愛を獲得し、未来に向かって大きく羽ばたいていくラストシーンには、観る者すべての心を癒してくれる幸福な感動が満ち溢れている。
<ストーリー>
アメリカに※公民権法が制定された1964年。もうすぐ14才になるリリィ・オーウェンズ(ダコタ・ファニング)は、サウスカロライナ州シルヴァン郊外の桃農園で、父のT・レイ(ポール・ベタニー)と暮らしていた。リリィには、母のデボラ(ヒラリー・バートン)にまつわる悲しい思い出があった。それはリリィが4歳のときのこと。家出の荷物をまとめるデボラと、それを止めようとするT・レイが争う光景をクローゼットの中から見ていたリリィは、母が落とした拳銃を拾って渡そうとして、誤って引き金をひいてしまったのだ。以来10年間、「大好きな母を殺してしまった」という罪の意識を背負いながら生きてきたリリィ。彼女にとって何よりも辛かったのは、乱暴で薄情な父との生活に疲れ、母に救いを求めたくなったとき、その母を帰らぬ人にしてしまったのは自分自身だという事実を突きつけられることだった。そんなリリィの人生を一変させる出来事が起きたのは、14才の誕生日を迎えた夏の日のことだ。
その日、オーウェンズ家で働く黒人家政婦のロザリン(ジェニファー・ハドソン)が、選挙権の登録に行った町で白人の嫌がらせにあい、袋叩きにされたあげく、警察へ連行される事件が起きた。ロザリンを助けようとしないT・レイに、怒りと不満をぶつけるリリィ。思わず「ママがいたら」と口走った彼女を待ち受けていたのは、父の冷酷な一言だった。「ママはお前を捨てて逃げたんだ。死んだ日には、持ち物を取りに戻っただけだ」。それは、リリィが描いていた優しい母のイメージを覆す、信じたくない言葉だった。「母は私を愛していなかったの?」。心の中に大きな疑問符を抱いたリリィは、答えを見つけるために旅に出ようと決意する。
T・レイに書置きを残して家を出たリリィが最初に向かったのは、ロザリンが収容されている病院だった。見張りの目を盗み、病院から脱出する2人。目指すティブロンは、デボラの遺品の中に名前が記されていた町だった。「この町に行けば、真実を知ることができるかもしれない」。淡い期待を胸に、リリィとロザリンはヒッチハイクでティブロンに向かった。
手がかりは、ティブロンに着いてすぐに見つかった。食べ物を買いに行ったダイナーで、リリィは、デボラの遺品にあった黒い聖母像のラベルが貼ってあるはちみつを見つけたのだ。はちみつを作っているのは黒人女性で、町はずれのカリビアン・ピンクの家に住んでいるという。さっそくその家を訪ねたリリィとロザリンの前に現れたのは、養蜂場とはちみつ作りで一家を支える大黒柱のオーガスト(クイーン・ラティファ)、音楽教師をしているジューン(アリシア・キーズ)、料理を受け持つメイ(ソフィー・オコネドー)のボートライト家の三姉妹だった。「叔母の家に行く途中だ」というリリィの作り話に疑いを抱きながらも、行き場を失ったリリィとロザリンを快くはちみつ小屋に迎え入れるオーガスト。その日から、リリィの新しい人生が始まった。
実際、知性と個性豊かなボートライト姉妹との生活は、リリィにとって新しい発見の連続だった。蜂を恐れるのではなく、愛を送ることが大切だと教えてくれるオーガスト。教師仲間のニール(ネイト・パーカー)との恋愛を楽しみながらも、結婚には応じない独立心旺盛な態度でリリィを驚かせるジューン。そして、人一倍純粋で繊細な心を持つメイは、双子の妹を失った悲しみに耐えながら生きていた。そのことを知ったとき、リリィは、心に喪失の傷を負っているのが自分だけではないことに気づく。
そんな日々の中で、リリィは養蜂場の手伝いをする黒人青年のザック・テイラー(トリスタン・ワイルズ)と友達になった。将来は弁護士になりたいと言うザックに、作家になるのが夢だと打ち明けるリリィ。ザックは、そんな彼女に1冊のノートをプレゼントしてくれた。しかし、このリリィとザックの友情が思わぬ悲劇を招くことになる。それは、2人がはちみつの配達の帰りに映画館へ立ち寄ったときのこと。リリィと一緒に有色人種席に座っていたザックが、踏み込んできた白人の手で外に引きずり出され、そのまま行方不明になる事件が起こる。ボートライト家に戻り、ザックの帰りを祈るような気持ちで待ち続けるリリィ。その思いはオーガストもジューンも同じだったが、ザックを弟のように可愛がっていたメイがショックを受けることを恐れた2人は、事件のことを知らせずにいた。ところがメイは、ザックの母親を通じて事件のことを知ってしまう。悲しみに打ちひしがれたメイは、「この世の重さに疲れたの」というメモを残し、帰らぬ人になってしまった。
ザックは無事に戻ってきたが、リリィは胸に芽生えた罪悪感をぬぐい去ることができなかった。私と一緒に映画館へ行かなければザックは暴行を受けることもなかったし、メイが死ぬこともなかった。私はこの家に災いをもたらす厄病神に違いない。そんな思いにとらわれたリリィは、ボートライト家から立ち去ろうと決意する。そんな彼女に、オーガストが話して聞かせた物語。それは、リリィの母デボラにまつわる驚くべき真実の物語だった……。
※ 公民権法:人種、宗教、性などに関して、州ごとに異なる基準が設けられていた差別を禁止する法律。1950〜1960年代、キング牧師らの指導下で行われた有色人種の平等を求める運動が功を奏し、1964年7月2日にリンドン・ジョンソン大統領の署名によって制定された。
2009年3月 TOHOシネマズ シャンテ他 全国順次ロードショー