ノッキン・オン・ヘブンズ・ドア
Knockin' On Heaven's Door
1997/ドイツ/90分
出演:ティル・シュヴァイガー ヤン・ヨーゼフ・リーファース ルトガー・ハウアー ティエリー・ファン・ヴェルフェーケ モーリッツ・ブライブトロイ フーブ・シュターペル レオナルド・ランジンク ラルフ・ヘアフォート
監督:トーマス・ヤーン
製作:ティル・シュヴァイガー、アンドレ・ヘンニック、トム・ツィックラー
脚本:トーマス・ヤーン、ティル・シュヴァイガー
撮影:ゲーロ・シュテフェン
編集:アレクサンダー・バーナー
音楽:ゼーリッヒ
(データベース登録者:kira)
偏差値:62.9 レビューを書く
天国のドアを叩け! [95点] [参考:2]
※ネタバレを含むレビューです。
ボブ・ディランの名曲を元に作られたドイツ映画の名作であり、全編に流れる物悲しい音楽が忘れられない作品である。
脳腫瘍であと数日の命と宣告された男マーチン(ティル・シュヴァイガー)と骨肉腫で末期ガンの男ルディ(ヤン・ヨーゼフ・リーファース)。
たまたま病院で同室となった彼らは、天国では誰もが海に夕陽が沈む時の美しさを話すんだと聞いたが、彼らはまだ海を見たことがない。
そこで彼らは海を見るために病院を抜け出し、奪ったベンツでガソリンスタンドや銀行で強盗をしながら海を目指して走り続ける。
だがそのベンツにはギャングのボスに届けるはずの100万マルクが積んであったことから、彼らは警察とギャングの両方から追われるはめになる。
本当なら自暴自棄になってもいい彼らだが、人生最後の目的を見つけ、残り少ない時間の中で燃え尽きる寸前に輝くロウソクの光のような友情を深めて行く。
銀行強盗など悪事を重ねる彼らだが、拳銃で相手を脅しても傷つけることはない。
自らの寿命がつきかけている彼らには他人の命を奪うことなど出来ないのであろう。
ギャングと警察との激しい銃撃戦に巻き込まれても、不思議と誰一人死ぬこともない。
彼らにとっては敵役のはずのギャングと警察が、ちょっと間抜けで憎めないのがほどよい。
そのため劇中では凶悪犯と報道されている彼らであるが、観ているこちらは早く彼らに海を見せてやりたい気持ちで一杯になる。
100万マルクは高級ホテルでの遊びや母親へのプレゼント、強盗した銀行などへの返済、そして残りは全て見ず知らずの人々に分け与えてしまう。
100万マルクを遣いきり、海まであと少しのところでギャングに捕らえられ、ボス(ルトガー・ハウアー)の元へと連れて行かれる。
彼らの運命もこれまでかと思ったとき、彼らの目的を知ったボスの口から信じられない言葉が告げられた。「急がないと時間がないぞ。」 ルトガー・ハウアー渋すぎるぞ!
ようやく海岸にたどり着いた彼らが見たのは、鉛色の空の下で、強風に波だつ暗い海であった。
これが南国の空の下に広がる美しい海であったならこの作品は台無しになったであろう。
最後の夢がかなった彼らは満足したような、少し悲しいような顔で荒れた海を見つめている。
海を見ながらタバコを吸い、テキーラを一口飲んだあと砂浜に座ったマーチンはあっけなく死んでいく。
このあっけなさがこの作品の真骨頂であり、初めて観た時はその潔さが衝撃的であった。
砂浜に1人残されたルディもおそらくそのまま死んでいくのだろう。
そして流れる「ノッキン・オン・ヘブンズ・ドア」の歌。何度観ても泣けるラストである。
彼らは今も天国から、海に沈む太陽を見ているのだろうか。
2009/02/07 00:11 (2009/11/07 06:19修正)
kira
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