菅野美穂『ジーン・ワルツ』初日。これぞ舞台挨拶の醍醐味なり

『ジーン・ワルツ』

これまでに僕も様々な舞台挨拶を取材してきたけど、記憶に残った舞台挨拶もあれば、ほとんど記憶に残っていない舞台挨拶もあって、それは様々だ。最も思い出に残っている舞台挨拶は何かと言ったら、僕の場合、その質問をされたときにはいつも『パーマネント野ばら』の舞台挨拶(記事はこちら)をあげてきた。菅野美穂(33)がステージに登場したときの、そのときの空気の明るさといったら、この仕事をやっていて最高の一時ともいえる忘れられないものだったからだ。

先日、2月5日(土)に東映の『ジーン・ワルツ』(現在公開中)の初日舞台挨拶に行ってきたが、この日の舞台挨拶も自分の中では『パーマネント野ばら』に匹敵する、記憶に残る舞台挨拶になった。偶然なのか、これも主演は菅野美穂だ。いや、菅野美穂だから舞台挨拶が生き生きとしたものになったのかもしれない。途中何度かハプニングがあり、順調に運んだ舞台挨拶とは言い難かったけれど、菅野美穂の持ち前の明るさで吹き飛ばした感じ。今週はこのイベントの詳細をレポートしたいと思う。

『ジーン・ワルツ』は、『チーム・バチスタの栄光』の海堂尊が原作の医療ミステリーだ。”ジーン”は”遺伝子”の意味であり、菅野美穂は顕微授精のスペシャリストに扮している。浅丘ルリ子ら名役者たちも登場する今季最大の話題作のひとつと言える映画だ。

舞台挨拶には、菅野美穂の他、田辺誠一(41)、白石美帆(32)、桐谷美玲(21)、片瀬那奈(29)、音尾琢真(34)、南果歩(47)、海堂尊(49)、大谷健太郎監督(45)が登壇した。キャスト登場の最大の楽しみは、どういう衣装で登場するかだが、今回は女優陣がそれぞれ全くイメージカラーを変えてきたので、とてもカラフルで見栄えが良かった。南果歩と菅野美穂の鮮やかな服装は写真写りも非常に際立つし、白石美帆と片瀬那奈も左右で色の調和が取れている。桐谷美玲の花柄も素敵だ。ハイヒールには共通のコンセプトも感じられる。そして、やっぱり女優さんは皆足に光沢があってすらりとして綺麗だ。カメラマンの多くは女優を撮るために取材に来ていると言っても過言ではなく、この日は30社ほどマスコミが入っていて、女優たちはカメラマンのフラッシュを一斉に浴びていた。我々は撮ることに必死だが、一般の観客にとっては、この一斉にフラッシュを浴びている光景が何とも神々しく見えるに違いない。

ちょうど別の会場では『毎日かあさん』(奇しくも原作者は『パーマネント野ばら』の西原理恵子)の初日舞台挨拶が行われていた。初日舞台挨拶というものは通常ならば土曜日の上映初回と2回目の間に行うものであり、どうしてもスケジュールが他と重なるため、マスコミの取材もどちらかに割れる傾向にある。どちらにマスコミが多く集まるかで映画のヒットにも少なからず影響するが、そういうライバル対決も初日舞台挨拶の醍醐味のひとつだ。

観客の中には、毎週舞台挨拶に行くことを生き甲斐にしているフリークもいる。空気もちゃんと読みつつ、主演女優の名前を声に出して呼んで盛り上げてくれるとてもありがたい観客である。登壇者にとっても嬉しいし、イベントも盛り上がる。こういうフリークもちゃんと相手にしてくれる優しい女優がいる。菅野美穂だ。『パーマネント野ばら』のときはファンの声援のひとつひとつに返事をしていた。この日も「菅野ちゃん!」と呼ばれて「はーい!」とちゃんと相手の目を見て手を振って応え、「あ、いつもありがとうございます。あの方、いつも来てくれる人なんですよ。三谷幸喜さんに似てるんですよね」と顔まで覚えていた。(ちなみに、この人は同じ日に『ケータイ刑事』の舞台挨拶(記事はこちら)にも来ていて大政絢の名前を呼んで盛り上げていたぞ)

菅野美穂がそこにいると、場の空気が明るくなっていく感じがする。この明るさは伝染するもので、他の登壇者も自然と明るくなっていく感じ。そしてそれは観客も幸せな気分にしてくれる。これはある意味菅野美穂の才能ともいえる。前述した舞台挨拶フリークも、多分菅野美穂が一番だよと言いそうな気がする。なにせ公衆面前であそこまで構ってもらったのだから。

舞台挨拶では、菅野美穂は「私が30代でいつか母親になりたいという思いがあるので、この映画に参加できて、私自身幸運でした。今までは夢を見るような気持ちで赤ちゃんを産みたいなと思っていましたが、10ヶ月お腹の中に赤ちゃんがいるとどういうことが起こりうるのかと知って、前とは違う気持ちで赤ちゃんを産みたいなと思うようになりました」とコメントした。こういう映画とプライベートを絡めたコメントは基本的にマスコミが喜んで記事に書く傾向にある。

南果歩は「反抗期の15歳の少年が試写室でこれを見てたんです。その少年は”命ってこんなに大変な思いをして生まれてくるんだな”って言いました。私はその少年にありがとうといってハグをしました。その少年は、15年前に私が帝王切開で産んだ息子です」とコメント。なかなか舞台挨拶では聞けない、情景の浮かんでくる良い話である。

また、南果歩は「新生児ロボを優秀な美術スタッフが作ってくださって、本当に新生児そっくりのロボを菅ちゃんが取り上げて見せてくれるんですけど、ロボットとわかっていてもそこに宿るものがあって、よく誕生してきてくれたって、新生児ロボを見ながら何とも言えない感情が押し寄せてきましたね。新生児ロボは何体かあるんですけど、やっぱりうちのロボが一番可愛い! 親ばかでした」ともコメント。絶妙のユーモアに会場も沸いていた。

舞台挨拶の最後にはマスコミ向けのフォトセッションというものがある。絵づくりのため、鏡開きだったり、餅つきだったり、豆まきだったり、毎回様々な趣向が凝らされるわけだが、この日は双子の日ということもあって、小さな双子の子供たちと一緒に絵づくりをすることになった。ところが子供たちが全然言うことを聞かず、わんわん泣き出す子もいて舞台は大変な状態に。「あっちいってジュース飲もっか。ジュース飲んでおいで」と子供をあやす菅野美穂の姿が好印象だった。

生命誕生という尊いテーマを描いた『ジーン・ワルツ』。最後に菅野美穂が「命が大切なことってみんなが知ってることだと思うんですけど、でも普段の生活の中でどこかに置いてしまってることだと思うんです。今回私も映画の撮影を通して改めて考え直しましたし、この映画を見てくださった方に大切な人を思いだしてもらえたらなと思います」という挨拶で締め、イベントは幕を下ろした。

舞台挨拶の様子をフォトギャラリーにしてまとめたので、ぜひ一枚一枚クリックして見て欲しい。菅野美穂は舞台挨拶を心から楽しんでいる様子で、笑顔がとても自然である。会場の雰囲気が伝われば幸いだ。(コラム・写真撮影:澤田英繁)

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2011/02/07 1:43

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