ジャン・ルノワールはおそらくフランスで最も偉大な映画監督である。「大いなる幻影」はルノワールの作品でも最も有名な作品だ。これを見ると、カメラワークや音楽の使い方はかなり稚拙で芸がないことに驚く。しかし、それなのにこの映画は、受け手をすこぶる感動させる。どうしてこれが凡作とならず、不朽の名作になれたのか。それは登場人物たちの人情味ではないだろうか。その意味ではルネ・クレールという名手もいるが、クレールがパリっ子の心意気を下町の雰囲気の中に限定して描いたのとは対照的に、ルノワールは戦争の中でも人間は人間であるという、世界普遍的なヒューマニズムを貫いている。エリッヒ・フォン・シュトロハイム演じるドイツの職業軍人が、フランスの職業軍人に見せた誠意と友情は、カメラワークが云々という以前に、そのメッセージ性が、受け手の心を大きく揺り動かす。これが少しも臭くならないのは、これがどことなくコミカルなタッチで描かれているからである。悲劇的な戦争映画かもしれないが、個々のシーンはどこかお茶目で賑やかな雰囲気がある。だからこそ味わい深く、ストーリーが身につまされる。悲劇と喜劇の絶妙のバランスがこの名作を支えている。
なお、これに主演したジャン・ギャバンは同年「望郷」にも出演しており、この年はまさに油が乗っていたころだった。→DVD

この年から、戦争の影響がだんだんと色濃くなってきた。ナチスの台頭により、ドイツやフランスからアメリカへ亡命してきた映画人たちの活躍も目立つ。中でもドイツ人監督フリッツ・ラングがハリウッド亡命後の2作目「暗黒街の顔役」を発表し、フィルムノワールの基板を築いた功績は大きく、これに主演したヘンリー・フォンダの人気も高まってくる。
この年一番の俳優はポール・ムニで、「ゾラの生涯」と「大地」が話題になり、前者はアカデミー賞作品賞を受賞した。
また、「白雪姫」が大ヒットし、ようやくアニメーションがメジャーなジャンルとして認められている。
日本では「人情紙風船」が作られた他、原節子がドイツ映画「新しき土」に出演し、日独親善に貢献するが、いよいよドイツとイタリア以外の洋画の輸入規制が厳しくなってきて、「白雪姫」も日本では公開を見送られる。この年、アメリカではピーター・ローレが日本人探偵「Mr.モト」を演じたシリーズが人気を博すが、これも日本には輸入されていない。
 
ディアナ・ダービン
「オーケストラの少女」における、彼女の初々しい笑顔と、天使のように透き通った歌声は、暗雲立ちこめる時代を明るく照らした。日本では同作は12月に公開され、隠れファンも多かったという。→DVD
ウォルト・ディズニー
世界初の長編アニメーション映画となる「白雪姫」を製作し、興行成績第1位に。彼の功績により、アニメーションはメジャーなジャンルとなった。→DVD
ピカソ
この年天才ピカソはスペイン内戦をモチーフにした巨大壁画「ゲルニカ」を1ヶ月で描き上げた。今ではこれは20世紀最高の絵画といわれている。
1. 白雪姫
2. デッド・エンド
3. ステラ・ダラス
4. 歴史は夜つくられる
5. ハリケーン
2004年11月29日