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ワイルダーは小道具の使い方にかけては右に出るものはいない名匠であった。ワイルダーの映画は、小道具そのものがストーリーを左右する。ミステリー映画などでは小道具は大切だが、ワイルダーはほんの些細なシーンでも小道具を活用したものである。その使い道の意外性がワイルダー映画の面白いところで、それを発見することが、パズル映画の醍醐味なのである。 「失われた週末」には重要な小道具が数多く登場する。酒びん、タイプライター、タバコ、銃、牛乳瓶、ヒョウ柄のコート、などなど。 それぞれがストーリー上において重要な意味を持ち、主人公の心境を象徴したものになっている。タイプライターは社会復帰を意味する記号であるが、それは質屋で堕落を表す酒びんに変わってしまう。逆さにくわえたタバコは恋人に頼りたいという記号である。牛乳瓶は一日の始まりを意味する。恋人の思い出を意味するヒョウ柄のコートは、自殺を意味する銃へと入れ替わる。ラストでは馴染みのバーテンが主人公のもとへタイプライター(社会復帰)を持って現れる(写真6)。 最後には、主人公はついに酒を断つことに成功するが、ワイルダーはここも小道具を使って映像だけで描写している。酒の入ったグラスに、タバコをポトッと落とす。ただこれだけである(写真7)。セリフは何もないが、劇的なBGMと相まって、感動的な仕上がりである。 |
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2003年7月14日 |